初めて介護の仕事につくヘルパーさんをお迎えするたびに、ふと思い出すエピソードがあります。
私がヘルパーの資格を取得してまもなく、Aさんの入浴介助に一人で行くようになった時のことです。
「お湯はもっとやわらかく、一気にかけないでくれ」
「熱いお湯をかぶるだけでも疲れるから、優しくゆっくり身体を温めてほしい」
「階段を上るときは、後ろから支える手の力を一定に保ってくれ。強弱があると後ろに落ちそうな気持ちになる」
毎回たくさんのアドバイスいただきました。
ケアが終わるたび「Aさんは先輩ヘルパーと安心してお風呂に入りたいのではないか」と自信を無くし、不安いっぱいの気持ちで自転車を漕いで帰っていました。
Aさんは長年銭湯を経営されていた方で、心地よい入浴とはどういうものか、たくさんの知識と経験をお持ちでした。
教える手間を惜しまずに、新人の私に細やかに教えてくださったことは、私の宝物の知識となり、日々のケアで今も活かせています。
初めての介助から数か月後、そんなAさんのご家族から「実は〇〇くんとお風呂に行く日を一番楽しみにしてるの」と言われた時の嬉しさは今でも覚えています。
新人ヘルパーさんにもそんな貴重な出会いがありますように、と願っています。